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【小説】今村夏子『とんこつQ&A』 ~誰にでも起こりそう、だからこそ怖い~あらすじと感想

2023年4月13日

『とんこつQ&A』今村夏子 ~誰にでも起こりそう、だからこそ怖い~

こんにちは、MAMOKOです。

本日も私が今までに読んだ小説を紹介します。

今回ご紹介するのは、今村夏子さんの『とんこつQ&A』です。

MAMOKO
MAMOKO
一言でいうと、日常に潜む狂気は怖い

こんな人に読んで欲しい

『むらさきのスカートの女』が好きな人
日常のゾッとする話が好きな人
不穏で奇妙な話が読みたい人

Amazon商品の説明より

真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。

大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)

姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)

人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!

あらすじと読んだ感想

4篇からなる短篇集です。

とんこつQ&A

「いらっしゃいませ」が言えないのに接客業を始めた女性の話

嘘の道

嘘つき少年がいた街の話

良夫婦

ひとりぼっちの少年を見守る妻と、その夫の話

冷たい大根の煮物

自炊をしない私とわざわざ離れた安いスーパーに通う同僚の話

いそうでいなくて、いなさそうでやっぱりいる。そんな人たちのお話。

ずっと「怖い」って心の中で言いながら読みました。そして、てっきりとんこつラーメンが出てくるもんだと思っていました。登場人物の今川さんも思ってたんだから仕方ない。それにしても、『とんこつQ&A』ってタイトルは秀逸すぎる。ポップな装丁も、読み終わったあと見返すと、さらに惹かれる。

この人なんかおかしい。って思っていた人が、実はそこまでおかしくなくて、それ以上になんかおかしいヤバい奴が出てくる。それに気づく瞬間が最高にゾクッとする。”これはホラーです”って最初からわかっているものとは違った怖さがある。自分が過ごしている「日常」にありそうで、想像しやすい分リアルで怖い。”いるいるそういう人”って共感ができても、その人に対しての言葉にしにくい感情とか、思ってても言うのを憚ってしまう感覚とかが、物語を通して上手く表現されている感じがした。

 

※ネタバレ含みます

 

表題作「とんこつQ&A」は、読み始めたときは怖かったけど、予想しなかった結末で、なんかほっこりした。ほとんどの会話はQ&Aでできている。それに気づいた今川さんは素晴らしい。後半はほぼ台本だけど、あの尋常じゃない数を手書きでまとめあげたのには脱帽。いい人だと思っていた大将とぼっちゃんも絶妙に狂っていておもしろかった。

「噓の道」での父親の言葉とその結末。ゾッとした。自分も誰かにとってはそうかも知れない。自分にもそういう人がいるのは事実。普段気にしないことをちょっと考えさせられてモヤモヤした。

「良夫婦」が一番怖かった。自分がしたこと、しなかったこと。後悔とか反省とか、忘れていくことに対してのリアルさが伝わって怖かった。タムに気を取られていたけど、ところどころに違和感はあった。違和感はタムの事件で回収されるけど、別の違和感が生まれる。その瞬間は見て知っているけど、忘れていくニュースみたいだなって思ったことも含めて怖かった。

「冷たい大根の煮物」はそうなの?そうじゃないの?やっぱりそうなの!って感じ。誰も傷付かず、1万円は貸してしまったけど、貸しただけで終わってよかった。迷いなく1万円を貸してしまったように、読んでても貸してあげるだろうと思うように、怪しい人から親切な人へ上手く誘導された。他の3作に比べると怖さは控えめ。

どの話も読んでいくうちに、どうやって終わるんやろうってざわざわし、読み終わってもざわざわが増して残る。「嘘の道」と「良夫婦」の読後感の悪さが何とも言えない。”おもしろい”って軽々しく言えないけど、何て言うか、やっぱり読書はやめられないなって、本に出会いました。

今川夏子さんを語れるほど読んでなくて、まだ2冊目なのでわからないけどこの感じはめちゃくちゃ好きなので、もっと読みたいし、ワールドにハマりたい。

最後に

今村夏子さんの『とんこつQ&A』は読後感はよくないけど、読書の充実感を得られる作品でした。誰にでも起こりそうな日常で、想像しやすいことが怖さを増す。ざわつくし、落ち着かないけど今村夏子さんの作品は癖になります。

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本日は、以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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